詰碁とは、石の形をみて最終的にその石の死活がどうなるかを問うものですが、そもそも石の死活つまり活き石や死に石とは何でしょうか?
死に石
まず死に石について。これは説明は簡単です。活き石でない石のひとまとまりを死に石といいます。つまり、あとは活き石について理解すればよいわけです。
活き石
囲碁では、対局を進めていく過程で、ひとつながりの石のまとまりが出来上がってきます。
「石がつながっている」とは、相手の石に分断されずに、黒石どうし(または白石どうし)が碁盤上の線でつながっていることを指します。
さて、ここで囲碁の基本ルールを思い出していただきましょう。
この基本ルールに従って石を打ち合うとき、「絶対に相手に取られない」石のひとまとまりを作ることができるのです。
黒石でそれを作ってみましょう。
※注意:以下の説明で、黒石を囲っている白石、あるいは白石を囲っている黒石のひとまとまりはいずれも活き石になることを前提とします。
図1
例えばこんな形です。周りはすべて白石で囲まれていますが、この黒石は白番からは絶対に取られることはありません。
なぜなら、どの図においても、AとBが着手禁止点になっているからです。二つの着手禁止点があれば、白番からは石を置けません。
ところが、次図ならどうでしょう?
図2
これは、もはや活き石ではありません。
Aは着手禁止点のように見えますが、そうではなく、
図3
図3のように、黒石の周りのダメをすべて埋めてから、さらに白からAと打つことで黒石のひとまとまりを取り上げることができるからです。(実際には、周りの白石が活きていることを前提として、このように埋めたりAに打ったりはしません。白地が減るからです。これは後述します。)
図1と図2をよく見比べてください。前者は空点が2箇所、後者は空点が1箇所です。
ここが囲碁の基本ルールと関連して非常に重要な違いとなるのです。
図1のように、いずれも2個あるこの空点を「眼」と呼んでいます。そして図1の黒石のひとまとまりは「2眼あるから活き」などと表現します。
空点が独立に2個以上あれば活き石
空点は2個以上あれば、離れていても、また個あってもそのひとまとまりの石は活き石です。ただし、独立した空点である必要があります。
図4
図4のような黒石の形もOK。
図5
図5の形。2つのつながった空点が独立に2箇所ありますが、独立した眼としては全部で2箇所なので、やはり「2眼もつ」といいます。もちろん活き石です。確かめてみましょう。
図6
ここまで白から打てますね。しかし、この次は白から手出しができません。
欠け眼に注意!その眼は本物?
一見、眼を作ったように見えて、実はそうではないということがあるので注意が必要です。
例えば次の図:
図7
この図7の白のひとまとまりは、独立した空点が2箇所あります。では、この白石のひとまとまりは、果たして活き石でしょうか?
答えは、黒から打てば死に石となり、白から打てば活き石になります。
図8
図8は、黒から打った場合の図です。黒1と打つと、白石は死に石になります。なぜなら、Aの点が、
図8-1
この先に図8-1の丸印の地点の黒石のようにダメがつまると、この時点で着手禁止点ではなくなるからです。打った瞬間に相手の石(ここでは白石)を取れる場合は着手禁止にはならないのでした。このAの空点を欠け眼といいます。図8の黒1を打った時点でAは欠け眼なのです。
図9
図9は、白から打った場合の図です。白1と打つと、今度は完全に活き石となります。
完全な活き石と事実上の活き石
この呼び方、私が勝手に呼んでいる呼び方ですので、ご注意ください。
囲碁の分かりにくい部分、特に囲んだ石を取り上げなくてよいのか?という疑問に答えるよい考え方だと思うので、私が碁を周りの人に教えるときに取り入れています。
活き石を「完全な活き石」と「事実上の活き石」という風に、最初は分けて考えます。
次図をご覧ください。
図8
完全な活き石とは、完全な2眼を持つ活き石です。この図8の白石のひとまとまりが完全な活き石です。もちろん活き石ですので、黒から何手連打しても取りようがありません。
一方、事実上の活き石とは、同じように活き石なのですが、相手が2手あるいはそれ以上連打しない限り、2眼を作ることが保証されている活き石のことです。
図9
図9は、黒が2手連打しない限り、白石のひとまとまりが取られることはありません。なぜなら、黒がAを打てば白がBを打ちてばいいですし、黒がBを打てば白がAを打ちてばいいわけです。(このことを、「AとBが見合いになっている」といいます。)どちらの場合も白が打った時点で完全な活き石となります。
囲碁では通常、どちらも活き石と表現します。ただし、これから囲碁を覚えようとされている方に注意していただきたいのは、後者の場合も活き石に含んでいるという点です。
囲んだ石はいつ取り上げるのでしょうか?
詰碁から話がそれますが、この点が理解できると、相手石を囲んだときに、「囲んだ石を取り上げなくてよいのか」や「どこまで打たなければならないのか」がわかるようになります。
図10
図10の白石は完全な活き石です。周りの黒石が将来活き石になるとして、×印で示した空点はダメ(どちらの地でもない空点)であり、終局まで手をいれません。終局したら黒石あるいは白石で埋めることになります。
図11
図11の白石は事実上の活き石です。AとBが見合いになっています。周りの黒石が将来活き石になるとして、白からAまたはBにに打てば完全な活き石となり、以降は図10と同じように×印の空点がダメとなります。白はAやBに打ち急ぐ必要はありません。黒から打ってくるまで放っておきます。
図12
図12の白石は半死半生といっていい形です。この局面で、
図12-1
白から打つ場合は図12-1の1に打てば白石は完全な活き石となります。△印の空点が白地、×印の空点がダメです。
図12-2
黒から打つ場合も図12-2の1です。こう打った時点で白石のひとまとまりは死にになります。もちろん周りの黒石が活き石になる前提です。そして、黒はもうこの黒石の内側の空点には黒石を打ちません。なぜなら黒石を1手入れるごとにの陣地を1目減らすことになるからです。白からもこの黒石の内側の空点には白石を打ちません。なぜなら白石を1手入れるごとにの陣地を1目増やすことになるからです。打った白石はすべて死に石となり、黒のものになります。つまり、いずれの場合も相手に対して利敵行為となります。ですからもうここには打たないのです。
△印の空点は黒地、□印の白石は黒のもの(アゲハマ)となります。このまま終局まで両者とも手を入れず、終局したら黒番がこの白石のひとかたまりを取り上げてアゲハマとします。
これが、「囲んだ石を対局中に取り上げなくてよいのか?」に対する答えです。
セキ石
セキ石という石の形もあります。これも活き石なのですが、セキ石については別の記事で改めて説明します。