中手の基本

中手とは?

図1の詰碁の問題、黒先で白石を取る(死に石にする)手はもうお分かりだと思います。


図1

これは、次の図2:


図2

の黒1と打てば、白石のひとかたまりは二眼を作ることができず、死に石となるのでした。

これは、もともと図1の白石のひとまとまりの内部に3つの空点があったところに、白石が二眼を作れないように黒1の手を打ったわけです。

このように、二眼を作ることを阻止するために、眼形の急所に打つ手のことを中手といいます。

中手の種類

中手というのは、実はそれほど多くの種類があるわけではありません。

図1のように、三目の空点に対して黒が中手を打つ場合、この手を三目中手といいます。もとの空点の数を名前に付けるわけです。

この付け方で、実際には中手の種類は三目中手、四目中手、五目中手、六目中手があります。
七目中手も考えられますが、ここでは省略します。(六目中手に導きます。)

つながった8目地以上の大きさがあれば中手になる手はありません。ただし、囲いを作っている石が確実につながっていて、かつ手抜きをしない前提です。

以下、白石のひとまとまりに対して、黒から打つ時の中手を説明します。

三目中手


図3

3つの空点に対して、黒が1手打つことにより、白石に二眼作らせないわけですから、
図3の(a)(b)の2通りあるわけです。いずれも黒1が三目中手です。

図では、隅に書きましたが、これが中央/辺/隅のどの場所にあっても同じことです。
これは以下、同様です。

四目中手


図4

今度は4つの空点に対して、黒が1手打つことにより、白石に二眼作らせないわけですから、
図4の(a)はその典型例です。

(b)も4目の空点を持っていますが、これは実はこの時点で白石は死に石です。4つの空点のいずれに白が打っても三目中手で仕留める形になりますから、黒からは打つ必要がないのです。もちろん、白が4つの空点の打ちの1箇所を打ってきたら、黒は3目中手を打つ必要がありますが、このときまで黒からは打つ必要がないという意味です。・

(c)は少し特徴のある形で、白石の周りのダメがすべて詰まっているこの形では黒1が急所となります。ただしこれはコウになります。黒がコウに勝てば白石が死に石(正確にはその場でとられることになります)、白がコウに勝てば白石が活き石になります。

(d)や(e)の白石は事実上の活き石です。黒が4つの空点のいずれに打っても白石を1個置けば白石が活き石になるのがお分かりだと思います。

五目中手


図5

五目中手で取れる石の形は図5(a)(b)の2つです。(c)〜(f)の図では、いずれも白石を死に石にする急所はありません。

六目中手


図6

五目中手で取れる石の形は図6の1つです。数が多いので、白石が活き石になるケースは省略します。この形、特に名前がついていて、「花六」などと呼ばれています。図6の黒1の手が六目中手であり、急所です。

中手でとる形はここに上げたものだけですので、形をしっかり覚えましょう。詰碁の問題でも、中手に導く問題はたくさんありますし、実戦でもよく出てきます。

中手の九九

中手を覚えたところで、ついでに「中手の九九」とよばれるものを覚えておきましょう。

「三三、四五、五八、六十二」

読み方は「さんさん、しご、ごは、ろくじゅうに」です。

これは、中手を打って取る場合に、何手でとれるかを覚えるためのものです。

三目中手は3手、四目中手は5手、五目中手は8手、六目中手は12手で
とれるということです。

三目中手を例に考えてみましょう。


図7

図1が急所でした。白が相手にしない(つまり白2を手抜きして他の場所に打つ)としましょう。黒3ともう一手打ちます。今度は白石のひとまとまりがアタリになるので、白4と打って黒石1, 3を取り上げるとしましょう。


図8

図8になりました。黒は構わず黒5と打ちます。また白石がアタリになるので、白6を打って黒5の石を取り上げてもよいのですが、ウッテガエシになって結局取られますので、ここでも手抜きをしてするとしましょう。すると、黒7を打てばすべての白石を取り上げることができます。

さてここまで、黒は何手かけて白石を取り上げたでしょうか?黒1、黒3、黒5、黒7と打ったので、4手でしょうか?いえ、黒が3と打ったときに白が相手をして白4をこの詰碁の中で打っているので、手を交換しただけです。これは手数に含めません。ということで、黒が白石を取り上げるために要した手数は3手でした。

この3手という数字が「三三」の後ろの”三”の意味です。

以下、「四五、五八、六十二」も同様です。

ところで、もし中手を打てば、打たれた方の石のひとまとまりは死に石になるので、とりあげなくてもよいはずです。実際、詰碁問題では中手を打つ手を示せば問題として終了になります。

ところが、実戦ではその続きがあるのです。

この記事での説明では、白石を囲んだ黒石が「活き石」である前提で説明していますが、もし活き石でなかったらどうなるでしょうか?


図9

図9の(a)(b)の黒1が急所で、いずれも丸印の白石のひとまとまりが死に石になったように見えます。しかし、ここまで説明してきた図とは異なり、白石のひとまとまりを囲む、△印の黒石のひとまとまりが活き石ではないのです。この黒石をさらに白石が外側から囲んでいて、黒石には2眼はありません。

これは一体どういう結果になるのでしょうか?


図10

図10の(a)で、黒1、白2(図8で手抜きと書きましたが、かわりにこの白2を打ちます)、黒3と順に打っていくと、白4で図8と同じように黒石を取り上げたあと、黒1の空点に黒5、白6(やはり手抜きのかわりにこの空点に打ちます)次に黒3の空点に黒7を打てば、図8と同様に黒が白石のひとまとまり(丸印)をとりあげることができます。これで、黒石は活き石となります。

ところが、(b)の場合は黒3を打ったあと、白4とこちらに打てば、反対に△印の黒石をとれてしまうのです。今度は丸印の白石(および外側の白石のひとかたまり)の方が活き石になりました。

このように、どちらが相手の石を取り上げるかを競うことを「攻め合い」と呼びます。この(a)や(b)は、一手差を争う攻め合いでした。

実戦では中手を打つことで、打たれたほうが部分的に死に石になっても、その周りを囲んだ石が活き石でなければ、攻め合いになることがあります。中手の九九はこの場合に重要になってくるのです。

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